野球のスパイクに白色が増えた理由

黒い色は暑い?

晴れた日に黒い服を着ていてとても暑かった、という経験はありませんか?
真夏の炎天下で行われる高校野球大会では、近年暑さ対策として白色のスパイクシューズが認められ、熱中症予防に一定の効果があったと言われています。
黒い色が温かいのはなぜなのでしょうか? 今回は、モノの色と温度の関係をお話します。

高校野球スパイクシューズ

 

物体の放射率

全ての物体は電磁波を放射または吸収しています。
電磁波とは空間を伝わるエネルギーの波で、波長によって可視光線、紫外線、赤外線などがあります。


物体の放射・吸収のしやすさをそれぞれ放射率・吸収率といい、放射率=吸収率の関係にあります。
放射率(吸収率)は物体の材質や表面の色によって異なり、表面の色が白いほど放射率(吸収率)は低く、黒いほど高くなります。
つまり表面の色が黒に近いものほど、電磁波をより多く放射(吸収)しやすいということです。
熱を伝える赤外線も電磁波ですので、黒っぽい服はより多くの赤外線を吸収しやすく、高温になりやすいという訳です。

Tシャツ

 

放射率について

放射率とは、物体からの熱放射(赤外線エネルギー)のしやすさを0~1で表したものです。
全ての波長の電磁波を完全に吸収する「放射率=1」の仮想物体を「完全黒体」と呼び、放射率の基準となります。放射率は、材質、表面状態(酸化・汚れ等)、表面形状(粗さ・凹凸)、温度によって変化し、放射の波長や角度によっても変化します。
一般的にゴムやセラミックなどでは放射率が高く、金属等の表面に光沢がある物は放射率が低くなる傾向にあります。

 物質放射率(ε)代表値
金属 アルミニウム(研磨面) 0.05
アルミニウム(アルマイト処理面) 0.8
アルミニウム(黒色アルマイト) 0.95
非金属 アルミナ 0.63
ガラス・ゴム・水 等 0.9

 

色による温度の違いを検証!

今回、表面の色による温度の違いをアルミホイルを使用して検証してみました。
画像左側は通常のアルミホイル、右側はアルミホイルを黒く塗装したものです。これらを電気炉に入れ、250℃で加熱しました。
それぞれの温度を計測してみると、黒く塗装したサンプルの方が昇温のスピードが早く、温度が高いことがわかります。
確かに表面の色が黒いほど赤外線の吸収率が高く、高温になりやすいのです。

試験サンプル
検証結果グラフ

赤外線放射と工業用電気ヒーター

今回取り上げた物体の色と放射率の特性は、工業用電気ヒーターの世界でも応用されています。例えば昭和鉄工製のボードヒーターは、黒電解着色処理によって赤外線放射率を高めています。
電気エネルギーによる赤外線放射加熱は、高効率、クリーン性、省エネ性などが特徴で、工業用電気炉にも使用されています。
工業用電気炉設計の際は、ボードヒーターを始めとする工業用電気ヒーターを検討してみてはいかがでしょうか。

【KA】