電気ヒーターとは?

電気ヒーター
そもそも & あれこれ

身近に使われているものから工業用まで
電気ヒーターをわかりやすく解説 !

そもそも電気ヒーターって何でしょう?
家庭用に限れば電気ストーブや電気カーペットを思い浮かべるかもしれませんが、工業用を含めると電気を使った発熱装置の製品全般を指しています。
わざわざ「電気」とつけるのは、ガスや油の燃焼による加熱もあるからです。ガス燃焼はそのパワーや経済性から工業用ヒーターの主流でしたが、近年は安全性や騒音・排気・CO2 排出など環境性の観点から、電気ヒーターへの注目が高まっています。
家庭用と区別するため、「発熱体」と呼ばれることもあります。ここでは電気ヒーターのそもそもやあれこれを深掘りしていきたいと思います。

  1. 電気ヒーターとは ?
  2. 電気エネルギーの熱利用への始まり
  3. 電気ヒーターの発熱のしくみ
    ~電気エネルギーから熱エネルギーへの変換~
  4. 熱の伝わり方
  5. 電気ヒーターの種類と用途
  6. 電気ヒーターを使った電気炉・熱処理機

電気ヒーターとは ?

改めて、電気ヒーターって何でしょう。
電気ヒーターは電気から熱をつくりだす装置の総称です。
作り出した熱を直接加熱に利用する場合もありますし、高温になって放射される赤外線(熱放射)を加熱に利用する場合もあります。
他にも電気で作り出した磁場を被加熱物に作用させて加熱する方法もあります。
下図では代表的な電気ヒーターの加熱方式を整理してみました。

  • 抵抗加熱:発熱体の電気抵抗で加熱する方法

    ホットプレート・ヘアドライヤー

  • 赤外線加熱:発熱体(またはその被覆材)が発する赤外線で加熱する方法

    電気ストーブ・セラミックヒーター

  • 誘電加熱:電磁波を放射して被加熱物内で発熱させる方法

    電子レンジ

  • 誘導加熱:磁界により被加熱物内に電流を発生させ発熱させる方法

    IH 調理器

  • アーク加熱:電極からの放電の熱エネルギーにより加熱する方法

    溶解炉

電気ヒーターの選定にあたっては、発熱方法の理解と、被加熱物との相性や加熱条件を複合的に検討することが必要です。
各加熱方式についても詳しく解説していきますので、図も参考にしながら最後までお付き合いください。
次項では、電気エネルギーから熱エネルギーや赤外線が利用されるようになった歴史を振り返ってみたいと思います。

電気エネルギーの
熱利用への始まり

産業の発展とともに 19 世紀頃から電気の研究が活発になります。
1800 年アレッサンドロ・ボルタによる電池の発明、1820 年アンドレ=マリ・アンペールによる分子電流説、1826 年ゲオルク・オームによるオームの法則。 現在の電気の単位であるボルト(電圧)、アンペア(電流)、オーム(抵抗)は発明者の名前が由来となっています。
燃料を燃やして得られる熱エネルギーが、蒸気をおこしてタービンを回し、連結した発電機によって電気エネルギーに変換され始めた時代です。

この時代の物理学者にジェームズ・プレスコット・ジュールがいました。
彼は電流が熱に変わることに注目しました。
皆さんも点灯している電球がすごく熱かった経験があると思います。ジュールは、水に入れた導線にボルタ電池を使って電流を流し、そのときの水の温度上昇を測定するという実験を行いました。
そして遂に1840年、電流によって発生する熱量 Q は、流した電流 I の 2 乗と、導体の電気抵抗 R に比例することを発見したのです。
これが「ジュールの法則」であり、電気で得られる熱量の計算が容易になり、電気の熱利用が本格化していきました。

ジュールの法則
Q = RI2t 【発熱量 = 抵抗 × 電流2 × 時間】

さらに1879年のエジソンによる電気抵抗を利用した白熱電球の発明が、今日の赤外線加熱の一歩となりました。
電球は光を発する照明用として開発されたものですが、1800年の段階でハーシェルによって光の中に存在する赤外線と熱の関係が発見されていました。
赤外加熱の最初の工業利用は、1938年のアメリカフォード社における赤外線電球による塗装焼き付けだと言われています。

電気ヒーターの発熱のしくみ
~電気エネルギーから熱エネルギーへの変換~

先述した通り、電気ヒーターは電気を熱エネルギーに変換する装置です。ここではそのしくみをご紹介します。

抵抗加熱

先にお話した電球が熱くなっていた原因は、物体に電流を流す際に生じるジュール熱というものです。そうです、あの「ジュールの法則」です。
材料(金属)に電圧をかけて電流を流すと内部を自由電子が流れ、原子に衝突すること(抵抗)で格子振動を生じさせ、これが熱エネルギーとなります。
この「電気抵抗」で熱を発生させるしくみを抵抗加熱と呼んでいます。電気ヒーターの発熱の大部分は抵抗加熱によるものと言えます。

電気コンロはコイル状発熱体が抵抗加熱で発熱します。
赤外線加熱

発熱体が高温になることで発生する赤外線は物の温度を上げる働きがあり、加熱に利用できます。太陽の光に当たると暖かいのは、太陽光の中の赤外線によって身体が加熱されているのです。赤外線自体は熱ではありませんが、物質の分子の振動を増幅させて発熱させます。
赤外線は常温でもあらゆる物質から放射されていますが、高温になると放射量が増幅します。また比較的低温では遠赤外線が、高温になると近赤外線も多く放射されます。
近赤外線は金属を加熱する波長で、遠赤外線は非金属を加熱する波長なので、被加熱物により適性な選定が必要です。非金属である人体の加熱には遠赤外線が有効です。

※赤外線について詳しくはこちらから


赤外線のエネルギーで分子を構成する原子間の振動が増幅されて熱になります。
赤外線ヒーターの代表例は電気ストーブです。ランプ型ヒーターで赤外線を放射しています。
可視光も放射しますが、加熱には不要なためランプを着色して眩しさを抑制しています。
誘電加熱

非常に高速で+と-が入れ替わる「高周波電圧」により、電流を通さない誘電体(絶縁体)を加熱する方式です。
誘電体に高周波電圧を加えると、誘電体内の双極子(+と-の極を持つ分子)が高速で反転を繰り返し、周囲の分子との間で摩擦熱が発生します。【電気エネルギーが熱エネルギーとして消費されるという意味で「誘電損失」と言います。】
この誘電損失によって発生する熱で誘電体を内部から加熱するのです。
誘電加熱は、使用する電圧の周波数によって高周波誘電加熱とマイクロ波加熱に分類されます。
高周波誘電加熱は、相対する電極間につくられる高周波電界内で誘電体を加熱します。
マイクロ波加熱は、発振器からマイクロ波を放射して誘電体を加熱します(身近な例では電子レンジがあります)。

高周波誘電加熱
マイクロ波誘電加熱
マイクロ波誘電加熱を利用した電子レンジは加熱物内の水分子を回転振動させて温めます。
誘導加熱

電気で磁場を誘導して加熱させる方式です。コイルに交流電流を流すと、その周りには磁力が発生します。
コイルの中あるいはその近くに電気を通す金属を置くと、金属内には磁束の変化を妨げる方向に “うず電流” が流れます(これを電磁誘導といいます)。
金属には電気抵抗があるため、うず電流によってジュール熱が発生して加熱されます。
誘導加熱も広義では抵抗加熱ですが、被加熱物内部に直接発熱させることが大きな特徴です。
金属性の炉などは、この原理で炉を直接発熱させることで、他の熱移動による加熱方式に比べてエネルギーロスが少なくなります。
身近な例では IH コンロがあります。コンロ内のコイルで磁力を発生させ、コンロ上の金属製鍋にうず電流を起こして発熱させています。
ちなみに IH は Induction(誘導) Heating の略称です。

誘電加熱の原理
IH コンロの仕組み
アーク・プラズマ加熱

電極間に直流または交流電界を印加することで絶縁破壊起こすと、電極と電極の間の大気が回路となり、電気が流れる放電が起こります。
この放電を持続させて超高温で輝度の高いアークからの対流や放射で加熱するのがアーク加熱です。
電流が被加熱物へ流れ込むことによるジュール加熱が加わる場合もあります。
急速加熱・局所加熱に有効な加熱方法で、主に溶接等に利用されています。

アーク・プラズマの原理

以上のように、電気ヒーターの発熱の仕組みは様々です。
では次に電気ヒーターの熱がどのように被加熱物に伝わっているか述べたいと思います。

熱の伝わり方

熱は必ず温度の高いところから低いところへ伝わります。
電気ヒーターの場合は、温度の高い熱源から温度の低い被加熱物へ、といった具合です。
その伝わり方には「伝導」「対流」「放射」の3つがあります。

伝導

熱源に接している被加熱物へ熱が直接伝わることを伝導といいます。 また、被加熱物の内部で、高温部分から低温の方へと熱が伝わるのも伝導です。
物質により熱の伝わりやすさ(熱伝導率)が異なります。
一般的に金属は熱伝導率が高く、木材やプラスチックは熱伝導率が低い素材です。

対流

気体や液体などの流体が移動して熱が伝わることを対流といいます。
加熱された流体は膨張して軽くなり上昇、逆に冷たく重い流体は下降します。 これを繰り返して流体全体へと熱が伝わります。
被加熱物には、流体を媒介して熱が伝わることになります。
対流は、流体という物質の移動を伴って熱を伝えるのが特徴です。

放射

熱源が発する電磁波によって熱が伝わることを放射(輻射)といいます。
物質はその温度に応じた電磁波を放射しています。
高温の熱源は強い電磁波を放射し、その電磁波が被加熱物に吸収されると熱に変わります。
電磁波は真空中でも伝わるので、他の物質を媒介せず、離れた場所にも熱を伝えることができます。

発熱のしくみと熱の伝わり方は密接な関係があります。
以上を踏まえ、事項では具体的な電気ヒーターの製品を見ていきたいと思います。

電気ヒーターの種類と用途

本項ではいろいろな電気ヒーターの特徴・用途を解説いたします。

ランプヒーター

照明用の電灯と同じくフィラメントを用いた構造をとりながら、光を灯りとしてではなく熱として利用するヒーターです。
フィラメントへの電気抵抗により高温発熱して赤外線を発生させ、非接触の放射加熱を行います。
フィラメントの材料により、発熱温度や放射する赤外線の波長(近~遠)も変わります。
ハロゲンランプヒーターが代表例で、形態はスポット型やライン型があります。
家庭用では電気ストーブ、こたつ、オーブントースターなどに赤外線ヒーターとして利用されています。

シーズヒーター

シーズヒーター(sheath は「さや(鞘)」の意)は、発熱体であるニクロム線を金属パイプで包んだ構造のヒーターです。
ニクロム線は内包された絶縁粉末により金属パイプから絶縁されています。
被加熱物に応じて任意の形状に曲げることもでき、液体に直接ヒーターを挿入して加熱・保温することもできます。

構造が単純で、家庭用から工業用まで幅広い用途に使われています。またシーズヒーターをさらに別の材料で被覆して放射加熱の熱源として利用することもあります。
片側からリード線を出したものは特にカートリッジヒーターと呼ばれています。

面状ヒーター

金属箔を発熱抵抗体とした面状のヒーターです。
超薄型の金属箔をエッチングという技法で自由な形・パターンにプリントし、それを絶縁体で被覆して製品化しています。
被覆材により様々な機能を付加できるため、工業用の熱源として注目されています。
被覆材は樹脂、鉱物、セラミック等様々です。
ポリイミド等の樹脂で被覆されたものはフィルムヒーターとも呼ばれています。

※面状ヒーター(ステンレス箔ヒーター)に関して詳しくはこちらから

ステンレスをポリイミド樹脂で被覆したフィルムヒーター。
他にも被覆材料によってマイカヒーター、石英ヒーター、アルミヒーター、セラミックヒーター等がある。
シリコンラバーヒーター

ニクロム線やニクロム箔を発熱抵抗体として、それをシリコンラバーで挟み込んだヒーターです。
シリコンラバーは被加熱物への形状追従性が高く、約 250℃の高温に対応するものもあります。

電気ヒーターを使った電気炉・熱処理機

家庭用で使われる電気ヒーターは、ドライヤー・オーブン・ストーブのような最終製品に組み込まれていますが、工業用では、製品の製造プロセスにおける熱処理に利用される場合が多くなっています。
熱処理を行う電気炉や熱処理機の熱源として電気ヒーターが採用されています。

例えば、家庭にパンを焼くトースターがあるように、工場には液晶ディスプレイのガラスを熱処理するトースターがあります。このような熱処理装置が工業用電気炉と呼ばれているものです。
電気炉は被加熱物の材質・形状・処理目的等でさまざまな種類があり、組み込まれる電気ヒーターも特性を考慮して最適なものが選択されています。
処理目的だけでも昇温、焼成、保温、乾燥、予熱等さまざまです。

液晶ディスプレイ用ガラスを熱処理する電気炉

家庭用に比べて工業用で使用されるヒーターは、温度制御、熱均一性、効率性、耐久性等求められる性能のハードルが高く、ヒーター選定においては製品の性能はもちろん、課題への解決策を包括的に提案できるようなメーカーの力量が問われています。
製品製造のための電気炉の導入では、ヒーター単体の提案では不十分であり、ワンパッケージの電気炉として設計・製造が任せられるメーカーをおすすめします。

いかがでしたか?
電気ヒーターを探している方はたくさんいますし、電気ヒーターを売りたいメーカーもたくさんあります。
ただ何が一番マッチングするかの最適解で皆さん苦労しているようです。
電気ヒーターのそれぞれの特徴を少しでも理解していただき、製品選定・メーカー選定のヒントになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。