セラミックヒーターの仕組み

セラミックヒーター

発熱体である電熱線(主にニクロム線)を耐熱性の高いセラミックで被覆した電気ヒーターがセラミックヒーターです。
被覆材であるセラミックが加熱されて遠赤外線を放射します。
遠赤外線は媒体を介さず直接物質に吸収されて熱となる(放射伝熱)ため、媒体の温度上昇エネルギーが不要で、対象物を効率よく加熱することができます。

セラミックヒーターの特徴として、放射伝熱のクリーン性能、高効率加熱の省エネ効果、加熱時のCO2排出がない環境性能、設備のコンパクト化などがあり、様々な機器の熱源として、家庭用・産業用問わず幅広く利用されています。
産業分野では、このクリーン性能・環境性能の特性から、セラミックヒーターの用途がますます拡大しています。

形状自由度のニーズから生まれた編組み構造

電熱線をセラミックで被覆したセラミックヒーターは、板状のものや棒状のものがありますが、これらでは形状が限られるため、曲面や円筒形状など複雑な形には対応できません。

主に産業分野において、加熱用途や被加熱物の形状に追従できる形状自由度へのニーズから生まれたのが、編組み構造のセラミックヒーターです。
編組みセラミックヒーターは小片のセラミック碍子を電熱線で編み込んだ構造で、自由な二次曲面に対応できます。
製作寸法の自由度も高く、比較的大型サイズのヒーターに展開できるのも特徴です。
被加熱物の形状に合わせた接近加熱、密着加熱も可能な、今注目の工業用電気ヒーターです。

※編組みセラミックヒーターの製品について詳しくはこちら

編組みセラミックヒーターを構成する碍子

自動車部品や食品など不規則な形状、
機械配管等の円筒形のモノの加熱に最適

編組みセラミックヒーターの製造方法

「編組み構造」とは一体どのようなものなのでしょうか?
ここでは編組みセラミックヒーターの製造方法についてご紹介します。

セラミック碍子を並べる

設計図通りにセラミック碍子を並べます。
碍子を互い違いに並べることで網目状になります。

電熱線を通す

U字型に加工した電熱線を碍子の穴に通します。
互い違いの碍子を電熱線が貫通することで、「編組み」構造となります。

電熱線の接続

碍子を貫通した電熱線端部にショートバーを溶接して、電熱線を一繋ぎにします。
これで電流が流れるようになります。

端部碍子の取り付け

端部用の碍子を取り付けます。
リード部分を残し、電熱線全体がセラミック碍子に覆われます。

リードバーの取り付け

最後に電源に接続するためのリードバーを取り付けて完成です。

セラミックについて

セラミックは電気を通さない材料(絶縁体)として古くから碍子(電線とその支持物とを絶縁するために用いる器具)として利用されてきました。
金属やプラスチックと比べて硬度が高い反面脆い、耐熱性に優れている、酸化や腐食に強い、遠赤外線を吸収・放射しやすいなどの特徴があります。

硬いが脆い
セラミックは原子同士の結びつきが強く硬い材料ですが、大きな外力に対して原子が位置ずれできないために変形できず壊れてしまいます。

耐熱性がある
セラミックは融点が高く高温に強い素材です。

どうしてセラミックは硬いの?
【セラミックの原子構成】

セラミックは、「イオン結合」または「共有結合」という原子の結びつきによって構成されています。
どちらも大変強い結びつきで、この結合の強さがセラミックの硬さや融点の高さ(耐熱性)の秘密です。
一方で大きな外力が加わった場合、原子の位置をずらして変形することができずに壊れてしまいます。これが「脆さ」の原因です。

イオン結合
金属原子が非金属原子に電子を渡して+と-に帯電(イオン化)して結合
共有結合
非金属原子同士が電子を共有して結合

比較して金属の原子構成をみてみましょう。
金属原子の結びつきは「金属結合」といい、電子を放出して陽イオン化した原子が、放出したマイナスの電子(自由電子)を介して結びついています。
外力が加わると原子の位置をずらしながら変形することができます。
これが延性(伸びる性質)や展性(広がる性質)という金属の大きな特徴です。

この原子の結合の仕方は、電気を流すかどうかの性質も左右します。
金属結合の場合は原子間に自由電子が存在し、電圧がかかるとこの自由電子が移動して電流となります。金属が導電体である所以です。
一方セラミックは、先に述べたイオン結合や共有結合によって電子が原子に取り込まれているため自由に動くことができず、電圧がかかっても電流が流れることはありません。

酸化や腐食に強い
セラミックは高温でも酸化しにくく、表面近傍の構造や化学組成は変化しません。
そのため広い温度範囲にわたって長期間安定した状態で使用できます。

遠赤外線を吸収・放射しやすい
セラミックに限らずプラスチックや木材など金属以外の物質は、一般的に遠赤外線を吸収・放射しやすいですが、
高温に耐えられるセラミックがヒーターの被覆材として用いられるのです。

素材金属類木質類プラスチック類セラミック類
アルミ(光沢)ステンレスベニヤ板ポリプロピレンPET樹脂アクリル樹脂石膏陶磁器ガラスセメント
表面温度(℃) 91.9 90.9 91.8 45.2 41.6 44.1 42.8 53.8 51.4 53.2 44.5 90.3 44.3
積分放射率(%) < 1 3.6 7.5 79.8 84.1 84.6 86.0 91.7 92.2 83.0 87.7 88.1 92.7

これからのセラミックヒーター

近年の工業用加熱においては、「SDGs(持続可能な開発目標)」「2050年カーボンニュートラル」等、
高いレベルの環境性能が求められるようになっています。
セラミックヒーターは「必要な時に」「必要な箇所だけ」「省エネルギーで」「省スペースに」加熱出来る優れた性質があり、
様々な用途・様々な業界で活躍できる、無限の可能性を持った工業用電気ヒーターです。