明治43(1910)年に明治天皇お召し列車6号御料車の暖房機器として納入された鋳鉄製ラジエーター。当社の長い歴史と技術力を伝えるシンボルでありながら、社内に当時製作の予備品が2台残るのみで実物を確認をするには至っていませんでした。
平成30(2018)年11月、6号御料車が保存展示されている博物館明治村(愛知県犬山市)での車内調査が実現しました。現地学芸員指導のもと、侍従室のスポットライトを頼りに、古い図面に「放熱器」と記された位置にある卓子(テーブル)の天板を慎重に外すと、まさにそのラジエーターは姿を現しました。100年以上の年月を感じさせない保存状態で、菊の御紋の彩色も鮮やかで装飾もくっきりとしています。時の美術工芸の粋を集めた御料車内装の中にあっても引けを取らない品格溢れる佇まい、そして正面には誇り高く鋳刻された「SAITOW’S PATENT」の銘。まさに当社原点との100年越しの再会でした。
所有者:東海旅客鉄道株式会社 展示場所:博物館明治村(愛知県犬山市内山1)
御料車の中で長い間眠っていたこのラジエーターが、建築設備技術者協会の「2020年度 建築設備技術遺産」に認定されました。国産による暖房機器の歴史を、後世に伝えていきます。
昭和初頭に発売され、その高い性能で瞬く間に輸入品を駆逐し、その後長きにわたって業界に君臨した傑作機アサヒボイラー。国産ボイラーの普及は当社創業者 斎藤一の悲願でした。
そのアサヒボイラーが、国の登録有形文化財である豊郷小学校旧校舎の地下室に保存されていました。長年の浸水によって一部朽ちかけている箇所もありましたが、鋳鉄製の堂々たる姿は今尚健在です。
撮影協力:豊郷町教育委員会
戦時の供出を逃れ、建物が文化財として保存される幸運も重なって奇跡的に残っていたこのアサヒボイラーが、建築設備技術者協会の「2019年度 建築設備技術遺産」に認定されました。建築設備技術の進歩・発展において重要な成果をあげたものが認定されるものです。戦前の貴重な建築設備遺産としての価値が認められました。