電力密度で到達温度はどう変わる?IRセラフレックスヒーター実測

同じ電力でも熱さが違う? 「電力密度」とは

皆さん、同じ電気で温める道具なのに、熱さがまったく違うと感じたことはありませんか?
たとえば、赤く光る電気ストーブのヒーターと、床に敷くホットカーペット。どちらも電気を熱に変えていますが、その熱をどれだけの広さで出しているかが違います。
工業用電気ヒーターの設計では、この「広さあたりの電力」を電力密度(ワット密度)と呼び、到達温度を見積もるときの出発点にしています。電力密度は、ヒーターの出力を発熱面積で割った値です。

電力密度(W/cm²)= 出力(W)÷ 発熱面積(cm²)

IRセラフレックスヒーターは、遠赤外線放射特性の高いセラミック碍子に電熱線を通して編み組んだ、パッド状のヒーターです。厚さは6〜8mmで、平面・トンネル・波型・円筒などの形に設計できます。
今回は、使用最高温度1,000℃の編組みセラミックヒーター「IRセラフレックスヒーター」の実測データを使って、電力密度と到達温度の関係を見ていきます。

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実測データ:0.25→3.0W/cm²で165℃から1,005℃まで

では、電力密度を変えるとヒーターは何℃まで上がるのでしょうか。
300×280mm(線径Φ2.0)のIRセラフレックスヒーターの周囲を断熱材で覆い、電力密度ごとの到達温度を測りました。
0.25W/cm²では165℃でしたが、1.0W/cm²で480℃、2.0W/cm²で840℃、3.0W/cm²では1,005℃に達しました。
電力密度を0.25から3.0W/cm²に上げると、到達温度は約840℃上がったことになります。

 
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高温域ほど温度が上がりにくい理由
グラフをよく見ると、低温域と高温域で傾きが違います。
0.5W/cm²あたりの上がり幅は、0.5〜1.5W/cm²では175〜200℃でしたが、2.0〜3.0W/cm²では65〜100℃にとどまりました。
理由の一つは、温度が上がるほど周囲へ逃げる熱が増えることです。高温域では、加えた電力の多くが放熱に使われるため、同じだけ電力密度を上げても温度は上がりにくくなります。物体が放射で出すエネルギーは絶対温度の4乗に比例します(シュテファン=ボルツマンの法則)。
高温で使うほど、断熱や炉の構造を含めた全体の設計が効いてくるということです。

 

※このデータは試験条件下での一例であり、性能を保証するものではありません。
※IRセラフレックスヒーターの使用最高温度は1,000℃で、線径Φ2.0の標準規格は使用温度800℃・最大1.85W/cm²です。2.0W/cm²以上の点は、標準規格を超えた条件での試験値であり、この条件での連続使用可能性を示すものではありません。
※到達温度は、断熱の状態、周囲温度、ワーク(加熱する対象物)の大きさや熱容量などの使用環境で大きく変わります。

リードバー(端子部)の温度

設計で見落としやすいのが電源をつなぐリードバー(端子部)の温度です。
ヒーターを900℃に設定し、リードバーを外気(28℃)に出した状態で測りました。ヒーター端部から15mmの位置で198℃、65mmで77℃、115mmで53℃、165mmで45℃です。
端部がかなり高温になるのは、リードバー部分のニクロム線まで発熱するためです。ヒーターケーブルの接続には熱対策が必要で、リードの長さは最小60mmとしています。

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安全面では、次の点に注意が必要です。
•通電中はヒーターに触れない(感電の恐れ)
•ヒーターを固定する筐体には必ずアースを設置
•700℃を超えると碍子(アルミナ)の絶縁性が大きく下がるため、設置した状態で漏れ電流を確認し、適切な漏電ブレーカーを選定
・温度制御機器と過昇温保護機器を組み合わせて使う

目標温度からヒーターを考える3つのポイント

1. 目標温度から電力密度の目安を読む
たとえば実測例では、1.5W/cm²で680℃、2.0W/cm²で840℃でした。ただし、これは周囲を断熱材で覆い、ワークを置かない条件での値です。
ワークを加熱する実際の炉では、より高い電力密度が必要になることがあります。たとえば1,000℃級の自動車用加熱炉も、実測例より高めの電力密度で設計しています。
また、断熱が足りないまま出力100%の連続通電が長く続くと、ヒーターの寿命が大きく縮みます。断熱の状態やワークへの熱の移り方を加味して、余裕のある設計にします。

2. 線径と標準規格を選ぶ
IRセラフレックスヒーターの標準規格は次の2種類です。

線 形使用温度標準の最大電力密度最大電流
Φ2 800℃ 1.85W/cm² 23A 

Φ3.2

1,000℃ 2.7W/cm² 45A

3. 電源電圧と制御を決める
同じヒーターでも、電圧で出力は大きく変わります。電圧が2倍になると、出力は約4倍です。製品ページの参考仕様では、400×400mmのヒーターの出力は100Vで1.88kW、200Vで7.50kWです。
一方で、小さなヒーターに高い電圧をかけると、電流やニクロム線表面の電力密度が大きくなりすぎます。製品仕様では電流とニクロム線表面の電力密度に基準を設けており、たとえば200×200mmのヒーターに100Vをかけるような、基準を超える組み合わせは製作していません(製品ページの参考仕様表では「当社安全基準超過」と表示)。
温度の制御には、ヒーター温度調節ユニット「SHCシリーズ」(PID制御、オートチューニング付き)が使えます。実験・試作向けのレンタルもあります。

 

※出力・温度はいずれも一例であり、性能を保証するものではありません。

1,000℃級の熱処理炉へ

こうした電力密度の考え方は、熱処理炉の設計にもそのまま生きています。
たとえば高張力鋼板用電気炉「SHシリーズ」は、自動車のホットスタンプ(熱間プレス)に使う多段式の遠赤外線加熱炉です。IRセラフレックスヒーターを搭載し、MAX1,000℃、温度精度±10℃以内で、各段の温度を独立して制御できます。
自動車向けの多段式IR加熱炉は、国内外に多くの納入実績があります。

ご相談ください
「直径300mmほどの円筒形のワークを外周から700℃まで加熱したい。必要な出力と電源電圧は?」
「いまガスで行っている900℃前後の加熱を電気ヒーターに置き換えられるか試したい」
――こうしたご相談をお待ちしています。目標温度・ワークの大きさ・使える電源がわかれば、必要な電力密度やヒーターの形状をご提案します。

ヒーター選びの流れは電気ヒーターマッチングフローでご紹介しています。目的に応じた適切なヒーター選びが重要です。ぜひ一度ご相談ください。

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