木炭と半導体に共通する「低酸素熱処理」とは?
木炭と半導体には、意外な共通点があった!
夏の風物詩といえば、家族や仲間と楽しむバーベキュー(BBQ)。その際に使われる木炭は、古くから私たちの暮らしに根付いた身近な燃料です。実はこの木炭、製造過程で「低酸素熱処理」という高度な技術が使われているのをご存じでしょうか?
一方、最先端のテクノロジーである半導体製造の現場でも、同じく「低酸素熱処理」が重要な工程として活用されています。まったく異なる分野に思える木炭と半導体ですが、その製造工程には共通する技術があるのです。
今回は木炭と半導体の製造工程における「低酸素熱処理」について紹介します!
低酸素熱処理―酸素を調整して加熱する高度な技術
木炭は、木材を酸素の少ない状態で加熱する炭化によって作られます。酸素が多いと木材は燃えて灰になってしまいますが、反対に酸素が全くなくなると火が消えてしまいます。そこで職人は、窯の火の色や煙の量から温度を正確に見極め、空気口の大きさを巧みに調整。これにより、酸素濃度を低く保ちながら長時間高温を維持し、良質な炭を作り上げるのです。
この低酸素熱処理、半導体製造においても非常に重要です。例えば、シリコンウェハーの原子配置を整える熱処理(高速アニール処理)では、わずかな酸素の混入も許されません。酸化反応が製品の性能や歩留まりに大きく影響するため、100ppm(0.01%)以下という極めて低い酸素濃度が求められます。この環境を実現するために、事前に炉内の空気を窒素やアルゴンなどの不活性ガスに置き換えたり、真空ポンプで空気を吸い上げて真空環境にしたりしたうえで、熱処理が行われます。もちろん、熱処理中も低酸素状態を保つため、センサーで監視しながら環境の調整が行われます。
ちなみに、半導体製造では絶縁層を作る目的で、あえて空気中で加熱する工程があります。実はこの工程は木炭製造にも共通しており、「ねらし」と呼ばれ、火持ちのよい高品質な「備長炭」を作る際に用いられています。

まだまだあるかも?技術の共通点
いかがでしたでしょうか。夏のバーベキューでおなじみの木炭と、最先端テクノロジーの結晶である半導体。 身のまわりには、このように異なる分野での技術的共通点がまだまだたくさんあるのかもしれませんね。 |
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