アイスクリームスプーンの原理

今回の検証内容

皆さん、アイスクリームは好きですか?
美味しいアイスクリームですが、冷蔵庫から出したばかりのアイスクリームって、硬すぎて食べ辛いですよね。
そんな悩みを解決してくれる便利アイテム「アイスクリームスプーン」が話題になっているようです。

見た目は普通のスプーンと変わらない、けれどアイスがより美味しく食べられるアイスクリームスプーン。
今回はその仕組みを解説・検証していきます。

アイスクリームの食べごろ温度

日本アイスクリーム協会によると、アイスクリームの食べ頃の温度は、-14℃~-8℃とのことです。
固まる温度が-15℃なので、少し溶けた状態が食べ頃ということですね。
では、食べ頃温度にするためにどうするか。
一定時間放置したり容器を手で持って溶かそうとすると、容器全体の温度が上がってしまうため、食べ頃温度はすぐに過ぎてしまいます。

ここで活躍するのがアイスクリームスプーンです。
このスプーンを使うと、スプーンが触れた部分のアイスクリームがみるみる溶けて、スムーズに味わうことができます。
スプーンで触れた部分にだけ熱が伝わっているのです。
なぜこのようなことが可能なのでしょうか。
これはスプーンに使われている素材と熱の伝わり方が関係しています。

熱の伝わり方

熱には高温体から低温体へ伝わる性質があり、その伝わり方には「伝導」「対流」「放射(輻射)」の3種類があります。

「伝導」は物体中もしくは接している物体間で熱が伝わることをいいます。
今回の例では、高温体である手の熱がスプーンを通じて低温体であるアイスクリームに伝わる、という現象が起こっています。
「伝導」のしやすさは物質ごとに異なっており、「熱伝導率」という数値で表されます。
「熱伝導率」が高いほど、「伝導」で熱が伝わりやすい物質です。
一般的には金属の「熱伝導率」が高く、木やプラスチック等は低いです。
アイスクリームスプーンの素材は、金属の中でも特に「熱伝導率」の高いアルミニウムや銅が採用されています。

サーモグラフィによる検証

今回、アイスクリームスプーンの他、ステンレス製、木製、樹脂製の4種類のスプーンをサーモグラフィで撮影して、手に持ってからの温度変化を検証しました。

下の画像の通り、アイスクリームスプーンでは、開始30秒後にはスプーン先端まで黄色くなり、手の熱が伝わっていることが解ります。
他の素材のスプーンでは、1分後でも先端の温度の変化はほとんど見られませんでした。
素材による熱の伝わり方の違いがよくわかりますね。

余談ですが、ステンレス製スプーンは、同じ金属製ながらアルミ製のアイスクリームスプーンとは結果が大きく異なりました。
これは、ステンレスという素材の熱伝導率の低さを示しています。ステンレスは、金属の中でも最も熱伝導率の低い素材の一つです。
【主な金属の熱伝導率(W/m・K)  銅:398 金:315 アルミ:237 鉄:80 チタン:17 ステンレス(SUS304):16 】

また、熱伝導率の低い金属は、電気伝導率も低いことが知られています(ウィーデマン・フランツの法則)。
つまり、熱が伝わりにくい(熱伝導率が低い)ステンレスは、電気も伝わりにくい(電気伝導率が低い=電気抵抗が高い)のです。
電気抵抗の高さは、抵抗加熱の素材として有利に働きます。ステンレスは電気ヒーターに適した素材なのです。
※ステンレスの電気抵抗についてはこちら >>>「ステンレス箔ヒーター」

身近な熱の伝導

他にも身近なところに熱の「伝導」はあります。
夏の砂浜を歩くとき、裸足だと砂が熱くてとても歩けません。
これは太陽光で熱せられた砂の熱が伝導で直接足に伝わるからです。
ですがビーチサンダルを履けば歩くことができます。
ビーチサンダルの主な素材は熱伝導率の低いゴムやプラスチックなので、砂の熱が足まで伝わりにくいのです。

別の例として、やかんの取手があります。
やかんでお湯を沸かしたとき、取手部分が金属のやかんは熱くて持つことができませんが、木やプラスチックの取手であれば持つことができます。
原理は前述した例と同じです。

わたしたちは、身近なところで熱の「伝導」と、素材毎の「熱伝導率」の違いを経験しています。

伝導と電気ヒーター

熱の「伝導」は、ホットプレートや暖房機器等、熱を扱う様々な装置で起こっています。
その熱源の主流となっているのが電気ヒーターです。
電気ヒーターにも多くの種類があり、用途によって使い分けられています。
また近年では、機器の小型化・省エネ化等が要求され、それに応えるための新たな電気ヒーターの開発も盛んに行われています。

中でも金属箔を利用した薄型電気ヒーターは、従来熱源と同等の出力を維持しつつ、熱源を小型化することが可能です。
またその薄さから昇温・降温のレスポンスが速く、必要な時にだけ必要な温度に調整できます。
省エネ・小型化商品の設計の際は、是非薄型電気ヒーターを検討してみてはいかがでしょうか。

【HY】