絶縁体とは?(高温にして抵抗値を計測してみた)

絶縁体とは

絶縁体とは電気をほとんど通さない物質のことです。
電化製品を安全に使うために欠かせないもので、工業用電気ヒーターにも必要不可欠です。
絶縁体として一般的なものは、有機物では木材・紙・ゴムなど、無機物では雲母・ガラス・セラミックなどがあります。

絶縁体が電気を通さない秘密はその原子構成にあります。
絶縁体の原子の結びつきは大変強く、原子間を自由に動き回れる「自由電子」が存在しません。
一方、電気を通しやすい金属などの導電体では原子間に自由電子が存在していて、電圧がかかるとこの電子が移動することで電気が流れます。

  原子構成イメージ図

絶縁破壊

絶縁体が絶対に電気を通さないかといえば、そうではありません。
絶縁体の限界以上の電圧がかかると電気抵抗が急激に低下して、大きな電流が流れることがあります。
これを「絶縁破壊」といいます。

実はあの「雷」も絶縁破壊なんです。
雲の中で氷の粒同士がぶつかり合って発生した電荷が徐々に蓄積され、絶縁体である空気の限界を超える電圧になった時、一気に放電して空気中を電気が流れるのです。

雷イメージ

高温にして絶縁抵抗値を計測してみた

絶縁体は、工業用電気ヒーターには必要不可欠と書きました。発熱体である電熱線の被覆材として使われるのです。では、高温になっても絶縁性能は保たれるのでしょうか。

今回、代表的な絶縁体であるフッ素ゴム(有機物)とセラミック(無機物)の高温域での絶縁抵抗値を比較してみました。(「絶縁抵抗値」とは、電気を通さない絶縁性を数値化したものです。絶縁抵抗計500Vで計測。)

フッ素ゴムを高温にしていくと、250℃付近で絶縁抵抗値が急激に落ち始めます。一方セラミックは500℃付近から絶縁抵抗値が落ち始め、さらに高温になるにしたがって抵抗値は下がっていきます。

次に温度による状態の変化をみてみます。フッ素ゴムは、100℃くらいから柔らかくなり始めます。300℃で亀裂が入り、350℃になると溶け始めてしまいました。
セラミックは、900℃から赤くなり始め、1,000℃を超えて真っ赤に焼けますが、亀裂やひび割れなどの変質はみられませんでした。

 

絶縁性能比較グラフ

   

フッ素ゴムとセラミック

色々な絶縁体の工業用電気ヒーター

フッ素ゴムは形状自由度が高く、曲面などの複雑な形に対応できますが、300℃を超えるような高温度帯での使用はできません。

一方セラミックは1,000℃を超える高温でも変質することなく使用することができます。
700℃を超えると絶縁性が低下しますが、ヒーターの固定に絶縁・漏電対策を施すことで問題なく使用できます。
このセラミックに形状自由度を付加しようと考案されたのが「編み組み」構造です。小さなセラミック碍子を電熱線で編み込んだ構造により、自由な二次曲面に対応できます。
>>>編み組みセラミックヒーターについて

工業用電気ヒーターの絶縁体は、用途に応じて様々な素材が使い分けられています。
高温に耐えられるセラミック、フィルム状で非常に薄いが耐久性の高いポリイミド、安価な鉱物で科学的に安定しているマイカ(雲母)などです。
>>>ポリイミド・マイカについて

使用する環境や用途に応じて、適した種類のヒーター選びが重要ですね。

                                         【KA】

IRセラフレックスヒーター

ポリイミドヒーター