人工衛星はなぜ金色?

人工衛星といえば金色

もう3年ほど前の出来事ですが、皆さん覚えているでしょうか。
JAXAの打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに到着し、ニュースで大きく取り上げられました。
私も家のテレビでニュースを見ていましたが、気が付けば、もう3年も経っているのですね。時の流れは早いものです。

その頃からでしょうか、「人工衛星=金色」というイメージが世間に広まったのは。
(まだまだ知らない人も多いと思いますが・・・)
高級スポーツカー「フェラーリの赤」と張り合えるほど印象に残る色ですが、人工衛星はなぜ金色なのでしょう?

今回は、人工衛星の色の謎について調べてご紹介します。

はさぶさ2のCG画像

「小惑星探査機はやぶさ2」CGモデル
(by Go Miyazaki)

人工衛星の洋服

空気のない宇宙空間を航行する人工衛星は、直接太陽光にさらされる部分が100℃以上にもなるそうです。
反対に、日陰の部分はマイナス100℃以下にもなるという過酷な条件にさらされています。

このような過酷な温度条件から人工衛星を守っているのが「サーマルブランケット」という、いわば人工衛星の洋服です。
サーマルブランケットは、薄いフィルムとスペーサを多層に重ねて層と層の間に空間を作り、熱を伝わりにくくしているそうです。内側に空気の層を作って断熱する仕組みは、私たちが冬に着るダウンジャケットと同じですね。

外側のフィルムが金色のサーマルブランケットに覆われているので、人工衛星は金色に輝いて見えるのです。

ダウンジャケットのイラスト

金色の正体

ではなぜ人工衛星の着るダウンジャケットは金色になったのでしょう。他の色(例えばフェラーリの赤!)でも良かったのではないでしょうか。

JAXAのホームページで調べていくと、その秘密を解説しているサイトを見つけてしまいました! どうやらポリイミド(PI)と言われる超耐熱性フィルムを使っている事が理由の様です。
ポリイミドは1965年に米国のデュポン社が、商品名「カプトン」として上市し実用化が始まった材料です。
強固な分子構造と分子間力を持ち、一般的なプラスチックにはない優れた絶縁性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、耐摩耗性を有する最強のプラスチックなのです。


ダウンジャケットの素材をポリイミドで作ったので、金色のダウンジャケットが出来上がり、人工衛星が金色になったのですね。決して目立つために金色を塗ったわけではなかったようです。

ポリイミドフィルムの写真

ポリイミドフィルムは黄土色で透過性がある。
表面に光沢があるため、金色に光って見える。

意外と身近な素材

このような特殊な素材であるポリイミドですが、普段の生活で見る機会はないのでしょうか。

いいえ、実は私たちの身の回りに沢山使われてます。特にパソコンやテレビ、スマートフォンなどの電子機器の中に、ポリイミドを使用した回路基板がたくさん使われています。
表に出ていないのでわかり難いだけで、色々な機器の内部に使用されているのです。

また超耐熱性を有効に利用した「ポリイミドヒーター」という加熱用ヒーターもあります。
回路基板と同じく見掛ける機会は少ないかもしれませんが、以外と身近な機器の中で使われています。


いつか人工衛星の様に表に出ることがあれば、金色のヒーターに気付いてもらえるかもしれません。

ポリイミドヒーターの写真

【ON】