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お知らせ
2020/06/05

明治天皇御料車のラジエーターが2020年度「建築設備技術遺産」に認定!

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昭和鉄工

博物館明治村(愛知県犬山市)に保存展示されている明治天皇6号御料車内に残る鋳鉄製暖房用ラジエーターが、

このたび一般社団法人建築設備技術者協会の2020年度「建築設備技術遺産」に認定されました。




明治天皇お召し列車の客車として使われた6号御料車に、

当社の前身である斉藤製作所が暖房用のラジエーターを納品したとの記録が残っており、

当時同時に製作された予備品も2台現存しています。



当社大正時代のカタログ(前身の斉藤製作所時代)には、展示会に出品された

当該製品の写真が掲載され、受注の名誉を伝えています。

しかし長い間現物の確認にはいたらず、いわば幻の製品になっていました。

そんな中、所有者であるJR東海様と管理者である博物館明治村様から特別に許可をいただき

博物館明治村現地にて車内の調査が実現しました。

御料車は貴重品の宝庫のため、慎重かつ短時間の調査でしたが、

現存を確認できたことがこのたびの認定に繋がりました。

今回はその調査の模様をご紹介いたします。




博物館明治村です。愛知県犬山市にある明治時代をコンセプトとしたテーマパークです。

広大な敷地に明治時代の建造物等を移築し保存展示しており、歴史的資料も合わせて収集している野外博物館です。

調査は2018年の11月、明治村学芸員の方1名と当社2名で行われました。




敷地の一角にある鉄道局新橋工場の展示。ここが御料車庫になっています。





6 号御料車です。奥に 5 号御料車も見えます。

歴代御料車の中でも一番の絢爛さを誇るのが 6 号です。 当時の美術・工芸そして工業の国力を結集させました。



調査の前にもう一度いただいた図面を確認します。

中央にある天皇陛下の居室となる御座所に2台、両脇の侍従室に1台づつ、

計4台の放熱器(ラジエーター)が確認できます。

学芸員の方は、見た感じでは確認できないのでおそらくカバーされているだろう、とのこと。

今回は左側の侍従室の調査許可がおりました。御座所はさすがに無理でした。





調査開始です。脇のプラットホームから入ります。




御座所は外から確認。ガラス越しにも絢爛豪華な様がわかります。




侍従室です。

入る前に学芸員から手袋とシューズカバーを渡されます。

そして、「くれぐれも椅子に触らないように」との注意。

100年以上経過しているので触るだけでダメージになるそうです。





侍従室でに入りました。

図面で放熱器とある左隅には卓子(たくし)と呼ばれる台があります。

台の上の扇風機には金めっきがほどこされています。おそらくこの中にあるはずです。

写真では明るく見えますが、室内はかなり暗く、照明で照らさないと何も見えません。





慎重に家具を移動させ、扇風機をおろして、卓子を観察します。天板が外れるようです。





天板を外すと…ありました!卓子は放熱器のカバーでした。卓子を持ち上げて外します。





ついに全体が姿を表しました!







間違いなく、当社に残る 3 柱 5 節のラジエーターと同一の物です。 当社としては110年越しの感動の再会です。





全く褪色していない菊の御紋。純金の泥絵の具でしょうか。埃かぶっている感じはありません。

菊の紋の下には鋳刻された 「SAITOW’S PATENT」の銘があります。

いぶし銀に輝く 5 枚のセクション。塗装の厚みの関係でしょうか、

当社に残っているものより明らかに装飾がくっきりでています。

発錆がほとんど見られないのは当館の管理の良さと当時の技術、そして鋳物の耐食性の賜物だと思われます。

とにかく感動の保存状態でした。




こうして無事調査は終了しました。

調査ならびにその後の建築設備遺産申請までご協力いただいた管理者の博物館明治村様、

所有者の東海旅客鉄道株式会社様にはあらためて感謝いたします。ありがとうございました。

今後も貴重な遺産として次の世代に繋げていただければと思います。

尚、通常は車内に入ることはできませんし、

卓子にカバーされているためラジエーターを見ることはできません。

そのかわり当社には当時製作された同一品が保管されており、現在本社ギャラリーに展示しています。

お越しの際にはぜひご覧いただければと思います。

※ギャラリーはこちらのリクルートサイトでも紹介してます。

※博物館明治村の当該展示の紹介はこちらから。



これで建築設備技術遺産は昨年の豊郷小学校旧校舎の「アサヒボイラー」に引き続き2年連続の認定となりました。

創業1883年企業の責任として、今後もヘリテージ保存の協力や紹介を積極的に行ってまいります。